水銀は、これまでに多くの製品に使用されていた物質です。
しかし今、水銀が持つ毒性が、人体に与える影響の大きさが懸念されています。
水銀関連の規制が世界的に強くなる中、日本でも法律の改正が行われ、水銀の扱い方にまつわる規則が変更しました。
今改めて、水銀の廃棄方法や取り扱いについて確認しておきましょう。

水銀の特性について


まずは、水銀が持つ危険性から確認していきましょう。
現在ではデジタル化されている血圧器や体重計、体温計も、かつては水銀が使われている製品が一般的でした。
水銀使用製品には、その他にも蛍光ランプ、アルカリボタン電池などが挙げられます。
そのため、年配の人は特に、水銀を身近なものと感じているのではないでしょうか。
しかし近年、水銀の取り扱いについて危険勧告や規制がされています。
それは水銀が、気化すると毒性を発するという性質を持っているからです。
特に密封した空間で水銀を吸い込むことで、人体への影響も起こりやすいとされています。
頭痛や吐き気、しびれやけいれん、発疹、熱などあらゆる体調不良が引き起こされるほか、神経系の障害も引き起こし、運動機能の低下や視野狭窄なども懸念されています。
知識が不十分な状態で水銀を扱えば、重大な事故にもつながりかねません。

こうした毒性から、2017年8月16日に発効された「水銀に関する水俣条約」では、2020年までに水銀を含む製品の製造・輸出入を原則禁止にすることが定められました。
さらに、これを受けて「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」、略称廃掃法とも呼ばれている法律が平成29年10月1日に改定・施行されました。
改定後は、これまで以上に水銀の取り扱いについて規制が厳しくなっています。
今後、地球環境の水銀汚染や人体への悪影響を防止するためには、ますます水銀の扱い方が難しくなることが予想されています。
水銀にまつわる正しい知識や情報を身につけておかないと、知らずしらずのうちに法律違反を巻き起こす可能性もあります。

中でも、特に注意深く扱わなければいけないのが「特定有害産業廃棄物」に含まれる廃水銀です。
環境省の「水銀廃棄物ガイドライン」では、特定有害産業廃棄物に含まれる廃水銀を、次のように定義しています。

「一部施設において生じた廃水銀又は廃水銀化合物(水銀使用製品が産業廃棄物となつたものに封入された廃水銀又は廃水銀化合物を除く。)」
「水銀若しくはその化合物が含まれている物(一般廃棄物を除く。)又は水銀使用製品が産業廃棄物となつたものから回収した廃水銀」

水銀使用製品による産業廃棄物や、水銀含有ばいじんなどは、特別管理産業廃棄物として回収が義務づけられています。
排出事業者は、新たに改正された法律にのっとり、適正処理を徹底しなければいけません。

水銀の廃棄方法とその流れは?


安全に水銀を廃棄するためには、都道府県知事の許可を得た水銀の収集・運搬業者、処理業者に委託します。
このとき、委託業者がきちんと許可を得ているか、最新の法律改正情報を踏まえているかなど、必ず委託業者の信頼性に注目してください。
中には、許可を得ないまま営業を続けている業者や、詐欺まがいの悪徳な業者、不法投棄を行う業者、故意ではないもの抜けや漏れが多く結果として違法につながってしまう業者もあります。
そうした悪徳業者に委託し、違法行為を引き起こしてしまった場合、水銀の排出事業者が責任を負わなければいけなくなるためです。
廃棄物はいかなる場合でも、収集・運搬や処理を行った業者ではなく、排出事業者がすべての責任を背負います。
水銀廃棄の仕方によって、排出事業者の信頼を著しく失ってしまう可能性もあるため、よく検討してから委託事業者を選んでください。

水銀を廃棄する際の流れは、次の通りです。

◇問い合わせ
まずは委託したい水銀の収集・運搬業者、処理業者へコンタクトをとります。
このとき、最初に問い合わせた業者に即決せず、複数の業者を比較することが大切です。

◇打ち合わせ、見積もり
水銀の収集・運搬業者、処理業者と、処理の流れや費用など打ち合わせを行います。
不明な点がある場合には、契約前のこのタイミングできちんと確認しておきましょう。

◇契約
打ち合わせを行った上で、内容に問題がなければ、契約に進みます。
ここで、許可証、委託契約書、マニフェストなど必要な書類を揃えなければいけません。
書類の記載漏れも違法行為として取り扱われるため、作成時には十分注意しましょう。
委託契約書やマニフェストには「廃水銀等」が含まれていることを必ず記載し、適正処理を行います。

◇回収・運搬・処理
契約が完了したら、排出事業者立ち会いのもと、水銀の回収を行います。
水銀は密封できる運搬容器に収納した上で、回収・運搬します。
処分・再生するときにも、水銀が飛散、流出、揮発しないよう必要な措置をとらなければいけません。
水銀を埋め立てするときには、硫化、固型化してから処理を行います。

◇処理完了
すべての工程が完了したら、排出事業者へその旨が伝えられます。

水銀は精製・濃縮することで、再び水銀としてリサイクルすることもできます。
信頼できる業者へ委託し、地球環境にとっても有益な方法で適切に処理しましょう。

水銀の管理・廃棄時の注意点


水銀使用製品や廃水銀は、保管方法にも十分注意しましょう。
安全に管理するためには、他の物と混合してしまうことがないように仕切りを設け、高温を避けることが欠かせません。
また、水銀はその性質から容器を腐食させてしまう可能性があります。
腐食の心配がない炭素鋼やステンレス鋼の容器に入れてください。
また、特管産廃である廃水銀等については、必ず密封して管理します。

事業者が水銀を管理するときには、水銀の側に60cm四方以上の大きさの掲示板を作成し、必要事項を明記してください。
管理している廃棄物の品目(特別管理産業廃棄物・廃水銀など)、管理者氏名または名称、連絡先を添えます。
万が一、水銀にまつわる事故が発生した場合、すぐに管理者と連絡がとれるように環境を整えておかなければいけません。

特管産廃に分類される廃水銀等に関しては、管理にあたって特別管理産業廃棄物管理責任者を選出しなければいけません。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律の第12条の2第8項にて「その事業活動に伴い特別管理産業廃棄物を生ずる事業場を設置している事業者は、当該事業場ごとに、当該事業場に係る当該特別管理産業廃棄物の処理に関する業務を適切に行わせるため、特別管理産業廃棄物管理責任者を置かなければならない。ただし、自ら特別管理産業廃棄物管理責任者となる事業場については、この限りでない。」と定められているためです。

特別管理産業廃棄物管理責任者は、水銀を適正管理したり、処理計画を立てたりといった状況確認を行います。
万が一、なんらかの理由で水銀が気化し事故につながれば、その影響は社内だけでなく地域社会にも影響します。
特別管理産業廃棄物管理責任者はもちろん、そうでない立場の人も含め社内全体で水銀の管理状況に気を配り、トラブルが起きないよう注意しましょう。

まとめ

水銀使用製品産廃規制は歴史が浅いため、まだ対応できていない事業者が少なくありません。
水銀や水銀にまつわる廃棄物を排出する事業者は、今一度法律の内容を見直し、理解を深めましょう。
さらに今後、さらに規制の内容が改変していく可能性もあるため、今後の流れにも十分に注意を払わなければいけません。

 

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