今、身近なものでありながら毒性が高いとされている「水銀」について、世界的に扱い方が見直されています。
水銀は家庭にあるようなもの、例えば水銀温度計も含まれています。
不要になった場合、安易に「一般ごみ」として処分してしまいそうですが、水銀温度計を廃棄するときには正しい処置が必要になります。

水銀温度計の正しい扱い方とは?


水銀温度計は、水銀の熱膨張という性質を利用した温度計のことです。
デジタルタイプの温度計が出回るまでは、家庭でも病院でも、水銀温度計を利用することが一般的でした。
現在でも、使っていない水銀温度計を保管したまま……という家庭があるのではないでしょうか。
しかし近年、水銀温度計をはじめとした水銀使用製品の扱い方が、見直されています。
気化することで毒性を発するという水銀の性質が、人体へ影響を与えると懸念されているためです。
多量の水銀を吸い込んだ場合には、頭痛、吐き気、下痢、発熱、発疹、しびれなどを引き起こします。
ただし、家庭用製品に使われている水銀は基本的に「金属水銀」など、安全性の高い水銀が使われているため、過度な心配はいりません。
水銀が飛散・流出した場合には思わぬ事故につながりかねないため、事故を未然に防ぐためにも、水銀を含む製品はなるべく早く処理してしまうことをおすすめします。

こうした動きは、日本だけで起こっているものではありません。
2001年には、国連環境計画(UNEP)も水銀汚染の問題に着目し、新たな計画を打ち出すことで国際的に水銀にまつわるトラブルのリスク削減を目指しています。
これを受けて、日本でも水銀の廃棄方法が改正され、回収を推奨する声が上がるようになりました。
自治体のホームページやお知らせで「ご家庭で不用になった水銀体温度計を保管していませんか?」と呼びかける内容を目にしたこともあるのではないでしょうか。
自宅の引き出しや押入れを今一度確認し、使っていない水銀体温度計を放置してないか、確認してみましょう。
もちろん、注意したいのは水銀温度計だけではありません。
血圧計など水銀を使用した製品を持っているのであれば、早めに処理してしまいましょう。

今後も水銀温度計を使用する予定がある場合には、管理方法にも気を配らなければいけません。
誤って落とし、割ってしまったときには、水銀が素肌に触れたり、誤飲してしまったりといった事故がおきかねません。
水銀温度計は高温にさらさず、腐食しないよう注意してください。

水銀処理にまつわる法律


水銀にまつわる取り扱い方法は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」で定められています。
昭和45年12月25日に公布されたこの法律は、時代の流れとともに少しずつ改正され、平成29年10月1日にはまた内容が改正されました。
その際に、廃水銀にまつわる記述も改正されました。
水銀の処理方法は「一般廃棄物」か「産業廃棄物」か「特別管理廃棄物」かによっても変わるため、まずは処理したい水銀製品がどの分類に区分されるか確認するところからはじめましょう。

【特別管理一般廃棄物に含まれる水銀】……一般廃棄物として処理する水銀使用製品のことです。
水銀温度計も、多くの場合特別管理一般廃棄物として扱われます。

【水銀使用製品産業廃棄物】……水銀使用製品で、かつ事業を通じて排出される産業廃棄物のことです。

【特別管理産業廃棄物に含まれる水銀】……一部施設において生じた廃水銀又は廃水銀化合物、水銀もしくはその化合物が含まれている廃棄物、水銀使用製品が産業廃棄物となつたものから回収した廃水銀を指します。

【水銀含有ばいじん等(産廃)】……上記の特別管理産業廃棄物に該当しない廃棄物で、一部の条件に該当するものが水銀含有ばいじん等として扱われます。
一部の条件とは「水銀又はその化合物が含まれているばいじん、燃え殻、汚泥、鉱さいであって、水銀含有量が 15mg/kgを超えるもの」「水銀又はその化合物が含まれている廃酸、廃アルカリであって、水銀含有量が15mg/Lを超えるもの」です。
この条件に当てはまり、かつ製品の水銀含有量が 1,000mg/kg(廃酸、廃アルカリの場合は 1000mg/L)以上の製品は、処分・再生時に水銀回収が義務付けられています。

さらに、水銀による人的被害や環境汚染を食い止めるために「水銀に関する水俣条約」も発行されています。
これによって「水銀含有製品について、2020年までに製造、輸出、輸入を原則禁止とする」という旨が定められました。
水銀含有製品とは例えば、電池、ランプ、石鹸、化粧品、消毒剤のような製品のことです。
水銀を使用して製品づくりを行っているメーカーは、期限内に代替できる素材へと切り替えなければいけません。
また、この条約は、あくまで「水銀含有製品の製造、輸出、輸入」にまつわるものです。
現在使用している水銀含有製品について使用を禁止する、もしくは廃棄を強要する目的のものではありません。

ただし、前述のように水銀温度計のように身近な製品は、落とした拍子に水銀が漏れ出してしまう危険と隣り合わせています。
今後、水銀廃棄の規制がさらに厳しくなる可能性もあるため、なるべく早めに処分しておきましょう。

水銀温度計の処理方法


一般家庭に眠っている水銀温度計は、自治体で定められた処理方法に従って廃棄してください。
ケースやビニール袋に入れて乾電池などと同様に有害ごみの日に出す、もしくはステーション回収に出すなどの処理方法が一般的です。
一般家庭で管理している水銀温度計であれば、無料で引き取ってもらえます。
詳しい処理方法は、自治体のごみ収集課へ問い合わせて確認しましょう。

一部地域では、薬局・ドラッグストアの店頭で水銀温度計や水銀含有製品の回収を行っている場合もあります。
この動きは水銀規制が強くなるとともにはじまり、この方式を取り入れる自治体が少しずつ増えています。
薬局・ドラッグストアの店頭に回収ボックスが設置されている場合、扱いに困っている水銀含有製品を投入してかまいません。
混合されやすいのですが、病院では回収してもらえないため、注意してください。
回収してもらえる施設かどうかを見極めるためには「回収協力施設であることを示すステッカーや広告」が貼られているか確認し、不明な場合には自治体に問い合わせてください。
一般家庭ではなく、病院で使用している水銀体温計や水銀血圧計は、医師会・薬剤師会で回収を行っている場合もあります。

万が一、水銀温度計を破損してしまった場合には、すみやかに周りの人を安全な場所へ非難させてください。
処理をはじめる前に窓を開け、水銀が室内にこもり、濃度が高まってしまうことがないような環境を作ります。
こぼれた水銀は、ティッシュペーパーなどで拭き残しがないようきれいに拭きとってください。
このとき、水銀が素肌に直接触れることがないよう、十分気をつけてください。
水銀によって汚れたティッシュペーパーは、数枚重ねたポリ袋に入れて口をきつく閉じます。
まとめた水銀は、中が見える透明の袋に入れ、こちらも自治体の規定に従って処分します。

まとめ

水銀は身近でありながら、思わぬ事故にもつながりかねないものだからこそ、今一度、ご家庭に水銀温度計が眠っていないか確認してみてください。
もし水銀温度計が使ったら、安全のために早期に処理してしまうことが大切です。
実家や、ご高齢の方が暮らす家にも声掛けをして、誰もが安全に暮らせる環境を目指しましょう。

 

(C)HIROSHI WATANABE/SEBUN PHOTO/amanaimages