「紛争鉱物」という言葉を耳にしたことはありませんか?
今、さまざまな製品の透明性を証明するために、紛争鉱物にまつわる規制が厳しくなっています。
紛争鉱物の意味や取り扱いについて、知識を深めておきましょう。

紛争鉱物の意味は?


もともと鉱物とは、天然の無機物を指す言葉です。
そして紛争鉱物とは、その名の通り紛争地にて作られた鉱物のことを指します。
紛争鉱物は、人権侵害や暴力行為を行っている武装勢力の資金源と言われています。
そのため、鉱物を使用する製品の製造過程では、紛争に加担していないことを示すために、調査や情報開示を徹底する流れが起きています。

紛争鉱物に関連して、特に注意深く取り扱わなければいけないのが、コンゴ民主共和国をはじめとした一部地域で採集される鉱物です。
コンゴ民主共和国と周辺諸国では、紛争問題が絶えず、人権侵害や暴力行為などの問題も深刻化しています。
コンゴ民主共和国は、日本のおよそ6倍と言われている広大な土地を持ち、人の手が加わっていない熱帯雨林が多く残っていることから、天然資源も非常に豊富です。
埋蔵資源は、日本円に換算すると数千兆円になるとも語られています。
そうした資源を狙って、他国から調達のために訪れる軍隊や反乱グループが居座り、繰り返し紛争が巻き起こっています。
コンゴ民主共和国では幼い子どもさえも、兵士として徴兵されたり、働かされたりと厳しい生活が続いています。
離れた国で暮らす人々が、コンゴ民主共和国の平和のために直接できることは多くありませんが、無関心なままでいると、意図せず紛争鉱物を購入し、武装勢力の資金調達に加担することにもなりかねません。

こうした現状に歯止めをかけるべく、2010年、オバマ前政権によって、アメリカのドット・フランク法(米金融規制改革法、ウォール街改革法)が制定されました。
ドット・フランク法では、さまざまな金融システムに対して言及されていますが、その中の一つとして紛争鉱物への言及があります。

紛争鉱物を購入しないためには、透明性の高い鉱物サプライチェーンを徹底することが欠かせません。
サプライチェーンとはすなわち、上流から下流へと鉱物を受け渡していくシステムのことです。
上流とは採掘現場のことを指し、最下流は最終消費者となります。
上流から下流へと流れていくあいだに接する、すべての工程がクリーンなものであると証明することは「武装勢力に加担していない」と証明することにつながります。
きちんとした調査を徹底し、鉱物サプライチェーンの透明性を引き上げる動きが、世界的に広がっています。

ドット・フランク法(米金融規制改革法)とは?


鉱物の意味について、また扱い方について考える上で無視できないドット・フランク法について、さらに掘り下げていきましょう。
米国証券取引委員会(SEO)から公表されたドット・フランク法の内容は非常に濃密で、全16編・2200ページにもなるボリュームで構成されています。
ドット・フランク法を端的に表現するなら「金融システムをあらゆる立場の人にとって公平にするもの」と言えるでしょう。
金融システムにおいては、強い権力を持つ人と立場の弱い人とで、不公平な関係性が成り立ってしまうことがめずらしくありません。
財力や権力、影響力を持った企業・団体ばかりが美味しい思いをするということは、アメリカに限らず、世界的に見られる光景です。

この度、ドット・フランク法の制定により、紛争鉱物を利用する製造業者に対して情報の開示・報告が義務づけられるようになりました。
さらに「OECD紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュー・デリジェンスガイダンス」も定められ、具体的な指示が共有されています。
ドット・フランク法の詳細については、2018年3月には、中小銀行の負担を軽減する法案が可決されるなど、改定が繰り返されています。
今後も、時代の流れとともに内容が変わり、報告義務対象企業が増えていく可能性もあるため、リアルタイムの情報を積極的に収集することが大切です。

報告義務対象となる企業


特定の企業は、使用する鉱物についての情報を開示しなければなりません。
対象となるのは、米国での上場企業、すなわちSEC登録企業のうち「製品機能または製品製造に紛争鉱物を必要とする者」です。
上記に該当する企業は、使用する紛争鉱物について原産国調査を行わなければいけません。
そして、コンゴ民主共和国諸国産ではないことや、リサイクル・スクラップであることが証明されれば、一次サプライヤーから「合理的に信頼しうる陳述書」を手に入れます。
調査内容や結果は、様式SD (Specialized Disclosure Report)にまとめ、報告します。
もし、コンゴ民主共和国諸国産であることが認められた場合には、デューデリジェンス手続きを行います。
そこからさらに、第三者である外部監査人による監査を行った上で、詳細の調査を行います。
対象企業は、評価結果についてきちんと記録し、管理することも義務づけられています。

紛争鉱物の定義と扱い方


ここで改めて確認したいのです、紛争鉱物に分類されるのは、次の条件に当てはまる鉱物です。

1:コロンバイトタンタライト(Tantal:タンタルの鉱石)、錫石(Tin:錫の鉱石)、鉄マンガン重石(Tungsten:タングステンの鉱石)、金(Gold)、またはその派生物
2:国務長官により、コンゴ民主共和国およびその周辺国において紛争の資金源となっていると判断される鉱物またはその派生物

1のように、紛争鉱物に分類される鉱物は頭文字をとって「3TG」と呼ばれています。
また、3TGの中でも特に紛争鉱物の調査対象となるのは、2にあるように、コンゴ民主共和国と接している国です。
アンゴラ、ブルンジ、中央アフリカ共和国、コンゴ共和国、ルワンダ、南スーダン、タンザニア、ウガンダ、ザンビアなどを含めた国群が「コンゴ民主共和国諸国」と称されます。
しかし、対象の鉱物を、対象の国から絶対に供給してはいけない、また使用してはいけないということではありません。
ドット・フランク法で定められているのはあくまで「情報を開示しなければならない」ということであり、その結果どう扱うべきかというところまでは厳しく言及されていません。
とは言え、企業の透明性や安全性を証明するためには、紛争鉱物の使用は控えることが望ましいでしょう。

紛争鉱物にまつわる規制は、世界的に今後ますます強くなっていくのではないかと言われています。
事業を通じて、紛争鉱物を扱うことがない企業であっても、紛争鉱物について知識を身につけておくことが大切です。
日本では、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)によって「責任ある鉱物調達検討会」も開かれています。
さらに、メーカー自らが調達サプライヤーへ向けた報告会を開いている事例も少なくありません。
紛争鉱物にまつわる知識は、企業の信頼性を左右する、非常に重要な情報です。
社内全体で理解を深め、かかわる人材全員が、紛争鉱物について正しい知識を身につけている環境を目指しましょう。
そのためには、社内で勉強会や講習会を行うことも大切です。

まとめ

日本国民にとって、コンゴ民主共和国の紛争問題ははるか遠くで起きている問題であると、どこか他人事のように感じてしまうかもしれません。
それゆえ、紛争鉱物の意味を正しく理解していなければ、自覚がないままに武装勢力に資金面で加担してしまうかもしれません。
しかし実際には、同じ地球上で起きている、決して無視できない問題です。
グローバルな取引を行う企業はもちろん、そうでない企業も、今後の展開に注目しておくべきでしょう。

 

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